僕たちが書く文章や語り言葉は、指示表出性と自己表出性というものがヨコ糸、タテ糸のように織り込まれたものだと、吉本隆明さんという方が書いた「言語にとって美とはなにか」という本に載っていました。
指示表出は「指し示す」性質。「花」「家」「仕事」、名詞は指示表出性がかなり高い。逆に「てにをは」は、それだけでは何も指し示してないが、語っているその人自身を強く表出している。これを自己表出性といっている(と思う)。
普段の会話、例えば仕事の会話などは、その人が話すことで指し示しているものを理解することで、コミュニケーションが成り立つ。何を言ってるか分からない、ということになると仕事はなかなかうまくいかない。
僕たちの日常のほとんどの会話は、意識的にも無意識的にも指示表出性を受け取ることを目的として、コミュニケーションしている。
でも、それだけでは、その人自身を聞いていることにはならない。もしその人自身を深く聞きたいのであれば、僕たちの言葉の自己表出性に意識や気持ち、心を向けて聞くことが実は重要となる。
なぜなら、僕らが自分自身の存在を宿らせてる言葉は、「てにをは」や言葉の語尾(けど、でも、だから、みたいな、とか、だったり、なくて、いて、etc)などで、ここを見逃すと、その人の語ってる居所も見失い、聞き手中心の会話が展開される。
「てにをは」や僕たちの言葉の語尾は、思考の管理下におそらくないので、自分の本音だったり、自分の居所、感じているもの、感情や感覚、言葉になる以前の感覚が、実はとても素直に現われている。
ミニカウンセリング探究講座で皆さんと見て探究しているテーマのひとつは、思考や情報だけにとらわれず、その人が今そこで生きている場所、景色を見失わずに、常にそばにいる聞き手の在りようとは何か?そしてその在りようによって可能となる語り手の言葉の世界にはどのようなことが起きるのか?です。そしてそれは、その人が無意識に現われている言葉を落とさずに、一字一句語尾まで丁寧に聞き辿っていくことで可能になるのではと考えています。
実際には、聞き手話し手に分かれた15分の会話を録音、一字一句、沈黙も含めて逐語録にし、語り手が語った言葉から、その方が言葉を重ねながら自分の風景が移り変わっていく様を、またそのような15分間を可能にした聞き手の姿勢、態度をていねいに見ていきます。
他者や自分を、より深いところで感じ、関わっていけるコミュニケーションに関心がある方、ぜひご参加ください。
日時:<第7期> 各回 19:00~22:00
(1)2018年10月31日(水)
(2)2018年11月07日(水)
(3)2018年11月21日(水)
(4)2018年12月05日(水)
(5)2018年12月19日(水)
場所:駒沢大学駅徒歩7分の和室(予定)
*詳細は申込いただいた方にご連絡いたします。
参加費:通し参加 全5回15,000円(レビューあり)
単日参加 各回3,500円
定員:4名
主催:OrdinaryWorld(中尾聡志、中尾絢子)
申込み:ordinaryworld0420@gmail.comまでご連絡ください。
<講座の内容>
参加者同士で
「チェックイン」今の気持ちをシェア
「音声の確認」 15分の会話の音声を聞く
「レビュー」 逐語録をもとに「てにをは」まで丁寧に言葉を辿る。そこから見えてくる景色を共有する。
「シェア」 感想、質問など自由に対話する探究の時間
「チェックアウト」感想を一言ずつシェア
※初回は、最後に15分間の会話の録音をしていただきます。
講師紹介:中尾聡志 「Ordinary World」代表 ファシリテーター・円坐守人
1978年4月埼玉生まれ。現在世田谷区在住。ワークショップの企画・運営、対話の場づくりを手掛ける。今まで手掛けてきた場の数は400以上。「ワールドカフェ」「哲学カフェ」「読書会」「講読ゼミ」など。近年は「円坐」と呼ばれる非構成の場を中心に活動している。さらに「影舞」「縁坐舞台」「空間ピアノ」などの即興表現活動も行っている。その他、松戸市では、NPO法人CoCoTに所属し、高齢者見守りの活動に従事。
<ミニカウンセリングとは?〉
この講座では、15分間の二人の会話の録音し逐語録を起こしていただきます。そして、その逐語録をただありのままに見ていくことを通じて、聞き手と話し手の間に生じている現象を観察していきます。
すると、あるときは、聞き手と話し手が一つの生命のようになり、話し手が自ら向かいたい場所へ向かっていく姿に出会います。
また、あるときは、話し手が感じている景色を、聞き手の思考が自分の好みに変えていき、エネルギーが衰退していく姿を目撃します。
私たちが、相手の言葉や声をただそのまま聞き、見えてくる景色のありのまま見ていくことができるなら、話し手は自分の言葉に自分を宿しつづけながら、植物が伸び伸びと蔦や葉を広げていくように、話し手が感じるある一点を目指してすすんでいきます。
これはミニカウンセリングの15分間を丁寧に観察することで見えてくる事実です。
何度も自分へ問いを向けながら、言葉を口にしては確かめ、繰り返される言葉はその度にその存在感を増し、その人そのものとなっていきます。15分間の中の語りは、この世で唯一無二の語り手が、ただ一回きり
の人生を歩いていることを教えてくれます。
目の前の人や自分自身に出会うことを本当に望むのであれば、必要なものは、自分たちの姿や動きが見える目と、自分たちの声や気持ちを聞くことができる耳、の2つ。
それは新しく身に付けるものではなく、すでにあるものです。
ミニカウンセリング探究講座は、私たちが失った視力と聴力、そして私たち自身の言葉を取り戻すための時間です。
そして、時空をダイナミックに行き来しながら自分を語り生きる姿を目にしたとき、否定も肯定も超えて、目の前の人がただそのままのその人であるという事実だけが私たちの中に残ります。
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